サン・テグジュペリ『星の王子さま』(内藤濯訳)

「ああ!……きっと、おれ、泣いちゃうよ」
「そりゃ、きみのせいだよ。ぼくは、きみにちっともわるいことしようとは思わなかった。だけどきみは、ぼくに仲よくしてもらいたがったんだ……」
「そりゃ、そうだ」と、キツネがいいました。
「でも、きみは、泣いちゃうんだろ!」と、王子さまがいいました。
「そりゃ、そうだ」と、キツネがいいました。
「じゃ、なんにもいいことはないじゃないか」
「いや、ある。麦ばたけの色が、あるからね」